下記の赤文字部は画面でお話しをしている部分です。
(キーの選び方)
CWを始めてみて、やっと面白みがわかりかけてきた頃、これから本格的にDXやコンテスト、ラグチュウに、また、今後のステップアップなども考えれば、いったいどのようなモールス・キーを撰び、また使い分けたらいいのか正直悩んでおられる方々も多いことと思います。ここでは、モールス・キー(パドル) をどのように選んだら良いのか使用目的、運用形態、好み、操作感、等をご紹介します。
(モールス・キーの種類)
モールス・キーはモールス符号を送信するために送信機のキーイイング回路に挿入して回路電流を断続するために用いられ、大きく分けると縦振りキーと横型キーに分かれます、横型キーは、さらに複式キー、バグ・キー、エレクトロニック・キーヤー(パドル)の三つに分かれます。
縦振りキーは19世紀にモールス電信が発明されて以来、現在まで最も長期間にわたり使用されてきたもので、キーの原点に当たり、わが国では逓信省型(Post OfficeType)キーと云われています。これは、わが国でも明治以来現在まで最も長く使用されてきたオーソドックスなもので、構造が簡単で45 字/分程度の低速度の段階まであれば取り扱いも容易で入門者向けである反面、熟達したレベルまでに到達するには一定の素質と訓練に時間を要し、技能の習得が比較的難しいキーであるとも云えます。
それに比べ一横型キーは一般的に縦振りキーに比べ操作が簡単であり、誰でも上達が早く、最初から比較的早い速度で操作が可能で、縦振りキーのような手崩れ(速度上昇に伴い、思うように符号が出せなくなること)が生じないといった長所があります。しかし、最近では誰でも簡単に正確でスマートな符号が出せるエレクトロニック・キーヤー(パドル)が現在のアマチュア無線界での主流となってきています。
(モールス・キーの特徴と選び方)
◎ 使用目的にあわせて選ぶ
・ 固定運用、移動運用、固定・移動兼用
◎ 運用形態に合わせて選ぶ
・ DX(1)、国内和文(2)、コンテスト(3)、ラグチュー(4)
◎ 好みに合わせて選ぶ
・ 縦型へのこだわり、横型へのこだわり
◎ 操作感(打ち心地)に合わせて選ぶ
・打ち心地を決定する大きなファンクションは、(1)レバー・支柱などの機構部分の大きさと台の大きさ、全重量とのバランス(2)上下または左右の接点の材質と接点部と台の材質との調和(3)バネの材質と強さ・調整範囲(4)接点間隔の調整範囲と調整度のきめ細かさなどで決まります。
良い打ち心地とは、横型キーではレバーを操作して接点同士が接触した瞬間の感触が快くマイルドであること、適度なストロークでスムーズな左右運動ができること、縦振りキーでは接点同士が接触した瞬間、適度な反動により自然と手首が元の位置に跳ね上がるような快い反動感があるような状態のことをいい、このような打ち心地が得られるキーは長時間の運用でも疲れを感じさせないものです。
(1) 縦振りキー
縦振りキーは、レバーを上下に動かして操作するもので、低速度の段階(45字/分程度)においては、操作も簡単で入門者向けでもあり、オペレータ自身のオリジナリティー的な符号が自由自在に出せるといった特徴がある反面、90字/分以上の高速度で、1時間以上の長時間にわたり安定的に送信できるような熟達の域に達するには、前延のように一定の素質と訓練に多くの時間を要し、完全にマスターするのが比較的難しいキーであるとも云えます。(GT501A ,GT502A ,GT706KITなど)
(2) 横型キー
横型キーは、レバーを左右に動かして操作するため、往復式キーとも呼ばれ、分類上、複式キー(ダブル・スピードキーともいう。)、半自動キー(セミ・オートマチックキーまたはバグ・キーともいう。)、自動キー(オートマチック・キーまたは、エレクトロニック・キーヤーともいう。)の3種類があります。いずれも、縦振りキーに比べて、操作が簡単であり、上達が早い、わずかな練習で比較的早い速度で送信が可能、手崩れが生じないといった長所があります。(GN207A,GN907A,GN407A,GN607A,GN599DX など)
自分なりに、国内ショートQSO用、ラグチュウ用、国内・DXコンテスト用と使用目的や運用形態、スピードに合わせて、またその時の好みに応じて縦振りキー、複式キー、バグ・キー、エレクトロニック・キーヤー(パドル)とさまざま使い分けてCWオペレーションを楽しむのもモールス通信の醍醐味でしょう。
(縦振りキーのすすめ・魅力)
・各種類のキーのうち、とりわけ縦振りキーについて、その本質と魅力について解説します。
信号の有無で情報を伝送するモールス通信はデジタル通信の一種で、オペレータの技量が大きな比重を占める通信方式であり、それがまたモールス通信のおもしろさ、醍醐味でもあり、楽しさの原点であるといえるでしょう。
今やアマチュア無線の世界では、操作が容易で誰でも簡単に正確でスマートな符号が出せるエレクトロニック・キーヤー(パドル)が主流となっています。しかし、人それぞれ楽しみ方は様々であり、なかなかこれがベストというのは一概にいえません。縦振りキーは、他のキーででは味わえないようなオペレータの感情や自己表現が、そのまま手動操作によって送出符号に反映されると同時に、その時々の好みに応じた符号を自由
自在に出せるといった大きな特徴があり、自然志向的、アナログ的なところは他のキーでは到底真似のできないところに何ともいえない魅力があります。
そして縦振りキーを手にとってじっくり見てみると、それを形づくる各部品はどれをとってもむだなものはなく、非常に完成度の高いものであることに気づきます。そして単に電気回路の開閉を行う一種スイッチング素子としてではなく見えてくるころが不思議なものです。熟達すればエレクトロニック・キーヤー(パドル)に引けを取らない程度の高速で安定に符号を送出し続けることができるほか、相手方に使用しているキーの種別を感じさせないという域まで達することが可能です。それは、趣味の世界だからプロと違う、こういった楽しみ方が出来るからです。
縦振りキーによる高度なオペレーション技法について、紹介します。
・縦振りキーは構造が簡単でありわかりやすく入門者向けである反面、熟達した技能をマスターするには極めて難しいと云われていますが、誰でも正しい操作法と訓練の継続によってプロの領域まで熟達可能な送信技能上達法について紹介する。
熟達した技能とは一定の作業を手際よく、能率高く、確実に実行できる技量を指すもので、経験だけではなく、素質によるところも大きいとも云われています。
そして各種の技能共通に云えるることですが、熟達した動作を観察してみると(1)作業に緊張がなく伸び伸びとした姿勢(2)必要な作業部位を必要範囲内で動かしている(3)動作は円滑流暢である(4)作業が連続的な曲線運動をしている。(5)操作上の重心の上下、水平の移動が少ない(6)作業道具が身体の一部分のように動作がリズミカルで早い速度で動いている。(7)作業動作が意識的なコントロールというより反射的に滑らかに行われている。といったようなことが見受けられます。
高速練習を始めるに当たって、最初に手の調子を付けるため1から0までの数字を繰り返し送信するのが効果的果的です。これは短点、長点が順序よく変化しているため手指の筋肉の緊張と弛援の交替のバランスが取れて手の調子を良くし、正しいリズムの打鍵感覚を覚えるには好都合です。
高速度送信でのキー操作は合理的で手首の運動量が小さく無駄のない操作をしなければならないため、必然的に反動式の操作となりますが、手首の位置は画像のように中低速時の位置よりやや高く、親指と人指し指で囲んだ円形が卵形からやや長楕円形となり、第三指節の曲げた角度が浅くなって手首と第三指節とを結ぶ線は直線となっている必要があります。
こうした手指の形から自然と重心は上方と指先の方に移行してキーの打鍵操作は軽くなり、手首の上下運動幅は狭められてきます。
長点の操作の場合、指の力によって、ごくわずかに下降するだけで次の瞬間には軽快に跳ね上がって復帰します。それは学び始めの頃の低速度の短点ぐらいと思われるほどに早い速度です。
なお、キーを押下した時に第三指節を結ぶ直線上から下方に第三指節が下ることは反動の利用を妨げる結果となって手首の復帰の速度を落とすことになるので注意が必要です。そして力の入れ方として、ただ下方に圧下する気持ちだけでなく跳ね上がる復帰を予期した圧下でなければなりません。このことは速度を出す操作方法の最も大切なことです。
こうして長点の電鍵の操作方法は重心の上方、前方への移動と、手首運動幅の縮小と、力の節約をすることができ、その結果として送信速度は上がり、軽快な打鍵となって行くでしょう。短点の送信も指を反射的に動かし、接点間隔の中で反動を利用して長点同様の運動が行われます。
参考
(高速度送信での正しいキーの操作方法)
・人指し指と中指を揃えて自然に湾曲させ、指先をツマミの前方上部に軽く置く。
・薬指と小指は中に卵1個を抱き込むような心持ちで自然に軽く内側に曲げる。
・ツマミを摘んだ時、親指と人指し指で囲んだ円形がやや長楕円形になるようにする。
・親指をキーのツマミの左手前側方に添えて軽く摘む。
・前腕を机と水平にしてキーのレバーと概ね平行にする。
(キーの操作方法のチエックポイント)
・キーの位置は適当であるか。
・人指し指と中指は伸ばしたり、開いたりしていないか、またキーのツマミから著しく前方に出ている、あるいは引いていないか。
・親指は正しくキーのツマミに接触しているか。
・手首・前腕・肘の位置、角度の関係は良好か。
・指が過度に伸びたり湾曲したり、過度に力を入れていないか。
・操作時、薬指と小指は伸びたり振動させたりしていないか。
・肘を支点とせず、肘を上下してレバーを操作していないか。
・指の先端でトントンと叩くようなツマミの操作していないか。
・腕を前方につき出して手先の重みでツマミを操作していないか。
・符号送信の度に各指をキーのツマミから離して操作していないか。 |